鳥取県の断崖絶壁に建つ日本一危ない国宝、三佛寺奥院(投入堂)など「三徳山」参詣前に心身を清めた古湯、三朝温泉。世界屈指といわれる高濃度のラドン温泉が湧き、町を挙げて三朝温泉病院とも連携した「現代湯治」を打ち出しています。そのエッセンスもしっかり踏まえ、1~2泊で体感できる週末ショートステイ湯治を提案。温泉町のレトロ風情も女性に響き、遠出する価値が絶対ありますよ!
何といっても温泉がすごい!
三朝温泉の湯は、高濃度のラドンを含む放射能泉でラジウム泉ともいわれます。弱い放射線により、体の細胞の新陳代謝が活発になって自然治癒力が高まる「ホルミシス効果」で知られ、全国から湯治客が訪れています。
ラドンは湯気などの気化で生じるため、三朝温泉の湯治は湯に「浸る」だけでなく、その熱気を「吸う」、さらに源泉を「飲む」と3つのプロセスで体に取り込むことが基本になります。
筆者も実際に体感して驚きました。前の晩は仕事でほぼ徹夜でしたが、蒸気で満ちたラドン温泉の内湯に日中20分ほど入ると、夜にはみるみる元気に。再び入浴して就寝すると、翌朝はシャキッと目覚めて体が軽く感じられ、帰っても数日間はその状態が続きました。
もちろん、温泉はその人の年齢や体調、滞在日数などで、効果の現れ方が異なります。放射線というと怖いイメージもあるかもしれませんが、三朝地区の住民のガン死亡率は全国平均の約半分という報告も。地元の健康づくりにも役立っているのです。
全国でも珍しい「吸う温泉」を体験しよう
温泉の熱で気化したラドンを「吸う」ための施設があることも、ラジウム泉の湯治場として歴史が長い三朝温泉ならでは。ラドンを呼吸で肺から取り込むと、全身を巡って特に体の抗酸化力が高まるといわれます。
この「吸う温泉」は「ラドン熱気浴」と呼ばれ、季節や天候により室温30~40℃、湿度70~90%を目安に、源泉の熱で気化したラドンが充満した浴室に15~40分入ります。
サウナほど高温ではなく、昔ながらの湯治宿のいくつかは源泉の上に浴室があり、湯舟から上がればそのまま熱気浴もできる造りに。ほか、温泉町の専用施設でも体験できます。
●天然ラドン熱氣浴泉 すーはー温泉
地下から湧く源泉を利用した熱気浴が楽しめ、せっかくなら地下高濃度浴室「不老庵」(1回2,200円(税込)予約制)で体験を。料金にタオルや作務衣(男性はバスローブ)が含まれ、更衣室には個室シャワーも。営業9:30~18:00 火曜休 ※要予約、1日計7回の入れ替え制
週末ショートステイ湯治におすすめの宿5選
1、2泊の短い滞在でも、高濃度のラドン温泉による体のよい変化を感じたい! そんな人におすすめしたい湯治宿を厳選しました。湯の新鮮さはもちろん、思わずワクワクする三朝温泉ならではの湯治設備、おもてなしなど、ここだけの滞在ができるはず。伝統ある湯治宿ではタイムスリップしたような浴室など、古き良きレトロ感も味わいとして楽しみましょう。
●桶屋旅館
大正2年創業。2つある湯舟のひとつは足下から源泉が湧き、地熱で洗い場も暖かい。座っているだけで熱気浴もでき、三朝町源泉の配り湯の湯舟と、時間で男女入れ替えに。部屋は清潔でシンプルな和室で、トイレや冷蔵庫は共同。食事は地元の野菜や魚などが使われた家庭料理で、実家に帰ったような温かさが。1泊2食つき9,830円~(税込)
●旬彩の宿 いわゆ
湯舟は源泉100%のかけ流し。特に女性用の「オンドル風呂」は地下にあり、地熱で浴室全体が温かく熱気浴もできる。さらに、温泉熱を利用した床暖房室、天然オンドルを保有(コロナ感染予防で使用できない場合あり)。華やかな創作会席も自慢の宿で、家族やグループなどで泊まれる庭園露天風呂付きの離れも注目。1泊2食つき15,950円~(税込)
●古き良き湯の宿 木屋旅館
三徳川に面した、明治元年創業の老舗宿。自噴の源泉が足下からぷくぷくと湧く「楽泉の湯」は空いていれば貸し切りで使え、計4つの湯舟が24時間、源泉かけ流しに。ミスト状のラドンを吸うための「穴ぐらの湯」(1回25分1,000円(税別)、当日予約制)や飲泉場もあり、三朝の契約農家から仕入れる野菜や米などの食事も魅力。1泊2食つき15,400円~(税込)
●旅館 中屋
温泉町の薬師堂前に建つ400年以上の歴史ある湯治宿が、2004年全館新築してリニューアル。館内5か所に自然湧出の自家源泉を持ち、地熱でいつも暖かな耐震設計の宿に。地下の大浴場では熱気浴もできて、花崗岩の天然岩盤浴ができるオンドルもあり。食事では山陰の旬の食材が楽しめ、飲み物の持ち込みは自由。1泊2食つき10,000円~(税別)
●三朝館
大型旅館の華やぎが欲しい女性にはこちら。三朝随一の湯量を誇る自家源泉を持ち、日本庭園では源泉の滝を眺める大浴場や露天風呂、女性限定の約200輪のバラが浮かぶ「ばら妃乃湯」など、12種の風呂がかけ流しに。2022年11月に朝食ビュッフェ会場、12月に温泉露天風呂つきスイートルームが新規オープン。1泊2食つき16,500円~(税込)
さらに温泉町を散歩して「六感治癒」を体感
850年前の開湯から、三徳山信仰と深いつながりのある三朝温泉。参詣前に心身を清める三朝の湯治は「六感」(観、聴、香、味、触、心)を癒すと伝わります。湯治宿で湧きたてのラジウム泉に身を浸し、ラドンに包まれて深呼吸をしたら、最後は温泉町を散歩しながら「六感治癒」の仕上げを。
まず、朝の散歩なら三朝神社へ。早朝から参拝できて、この神社の手水舎には天然のラジウム温泉が注がれています。「神の湯」と親しまれ、参拝前に手や口を清めるだけでなく、ありがたい飲泉場でも。ご祭神も多い、温泉町を見守る神社です。
朝食やランチにおすすめなのは、ふるさと健康むら・物産館内「喫茶サンテ」(営業8:30~17:30 火曜休)の「神の食卓」です。1日30食限定ですが、ひとり500円(税別)で三朝町自慢の納豆かけご飯が食べ放題。ご飯はお米の品評会で3年連続、最高ランク特Aをとった鳥取県産「きぬむすめ」。納豆とセットの豆腐は三徳山裏手の神倉地区の地大豆で作られ、どちらも三朝町で栽培。神倉大豆の加工食材は、お土産でも買えます。
春は桜も咲く三徳川沿いを散歩するなら、中心地の三朝橋より下流の「かじか橋」まで足を伸ばしては。SNSに上げたくなるかじか蛙のオブジェとともに、足湯「かじかの湯」が設置されています(4~11月の9:00~21:30、無料)。清流の音や川面の風にも心癒され、ゆっくり足湯を楽しめますよ。
夕食前後の散歩は、お土産店も並ぶ温泉町の中心地へ。レトロ感に思わず立ち寄りたくなる泉娯楽場(営業15:00〜22:00、最終受付21:40 不定休)は、昭和36年の開業。昔懐かしい射的やスマートボール、手打ちパチンコに興じれば、昭和の温泉旅行にタイムスリップした気分に。
温泉コスメ
昔ながらの湯治宿が残る一方で、モダンな今どきの宿も並ぶ三朝温泉。圧倒的な温泉力を活かし、どんな世代でも湯治を楽しめるように。そんな温泉町の熱意が伝わってくる、鳥取の旅のデスティネーションになる温泉地です。また、全国各地の温泉化粧水の中でも「三朝みすと」は累計50万本突破と大ヒット。三朝温泉の源泉100%使用、完全無添加なので、遠方の人も試してみては?